川口隆夫ディレクション企画 「舞踏 ある視点」
小林勇輝 『Ice Cream Torch / Ceremony』

『Ice Cream Torch / Ceremony』(約15分)


BUTOHスナック(約45分)

小林勇輝について

小林勇輝は、2010年に渡英してアーティストとしての活動を開始しました。日本人として初めてロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートのパフォーマンス科に入学した2014年以降、ヨーロッパ、アジア、日本の多数の展覧会やアートフェスティバルなどで作品を発表しています。

絵画、インスタレーション、写真、映像など、彼の作品のメディアは様々です。しかしその中心には常に彼の「身体」があり、彼はそれを用いて、性や人種にまつわるステレオタイプを観客に問いかけます。代表作のひとつは「Life of Athletics」、写真とパフォーマンスによるスポーツとジェンダーをテーマにしたシリーズです。小林には、プロをめざすテニスの強化選手として10代を過ごした経験があります。スポーツの世界で感じた違和感、そして長く異国で暮らし、表現活動をする過程で自らの身体、ジェンダー、人種に向き合う体験を重ねたことが、作品に説得力をもたらしています。

Ice Cream Torch / Ceremony について

アーティスティック・ディレクターの川口隆夫は、小林への共感から新作を委嘱しました。

この《Ice Cream Torch / Ceremony》は「Life of Athletics」の最新作です。先行して、ウィーンとベルリンを拠点に刊行されている美術雑誌『SPIKE Art Magazine』67号(2021年)に写真による三部作が発表されており、パフォーマンスとしては世界初演となります。

小林はこれまで、スポーツの動きや実際のコスチュームを用いて「Life of Athletics」のパフォーマンスを制作してきましたが、この作品ではスポーツウェアではなく、ウェディングドレスを身につけて登場します。

旧博物館動物園駅の地上と地下を結ぶ階段に立つ小林は、ふたつのパフォーマンスを行ないます。それらの映像がスタイリッシュでありつつ不穏な空気を孕んで進行するなか、トランペットで演奏される、映画『炎のランナー』(1981年)のテーマ曲のメロディーとノイズが交互に響いていきます。性差別、商業主義による現在の社会の息苦しさに切り込む作家の思考と行為を記録した映像作品です。

アーティスト

小林勇輝|Yuki Kobayashi

現代美術家・パフォーマンスアーティスト。1990年東京生まれ。ハワイ留学を経て、10年に渡英。ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ学位課程卒業後、16年にロイヤル・カレッジ・オブ・アート パフォーマンス科修士課程を修了。自身の身体を中性的な立体物として用い、性や障害、人種的な固定観念に問いかけ、自由と平等の不確かな社会コードを疑い、人間の存在意義を探るパフォーマンス作品を中心に、国内外の美術展、舞台、フェスティバルで多数発表。

ホスト

川口隆夫|Takao Kawaguchi

1996年よりパフォーマンスグループ「ダムタイプ」に参加。2000年よりソロ活動を開始し、演劇・ダンス・映像・美術をまたいでパフォーマンスの幅広い可能性を追求する。08年より私的パフォーマンスシリーズ『a perfect life』を展開し、13年に第5回恵比寿映像祭に参加。近年は舞踏に関するパフォーマンス作品『ザ・シック・ダンサー』(田辺知美と共に、12年)、『大野一雄について』(13年)を発表。後者はニューヨーク・ベッシー賞にノミネートされ、18年にはパリ市立劇場でも上演された。
http://www.kawaguchitakao.com/

Credit

アーティスト

小林勇輝

音楽

北陽一郎

撮影編集

NPO法人LAND FES

舞台監督

河内崇

照明デザイン

森規幸(balance,inc.DESIGN)

スチール撮影

中川達彦

ユーリア・スコーゴレワ

主催

東京都

公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

企画運営

NPO法人ダンスアーカイヴ構想