川口隆夫『大野一雄について』

『大野一雄について』 前編(約90分)


『大野一雄について』 後編(約50分)


BUTOHスナック(約45分)




2013年の初演以来世界38都市で上演を重ね、2016年にはベッシー賞にもノミネートされた川口隆夫『大野一雄について』を、8年ぶりに東京で再演。伝説的舞踏家・大野一雄について、一方ではその動きを記録映像から「完全コピー」することで忠実に再現し、他方ではその世界観の大胆な再解釈を試みる話題作を、映像ならではの演出でお届けします。

川口隆夫による「舞踏についてのコンセプチュアル・パフォーマンス」。大野一雄の代表作の公演映像から、その踊りを完全コピーします。コピーに徹する川口のパフォーマンスが逆説的に大野一雄のダンスの魅力、スケール、謎を照射し、その反射光が川口隆夫というアーティストを輝かせる本作は、2013年の初演以来世界38都市で上演、2016年にはベッシー賞にノミネートされるなど大きな注目を集めています。2021年6月、上野恩賜公園野外ステージでの、東京では8年ぶりの再演となるパフォーマンスを記録した映像作品です。

photo by Tatsuhiko Nakagawa

川口隆夫について

川口隆夫は1980年代後半から実験演劇やパフォーマンスなどさまざまなプロジェクトに参加し、スペイン留学から帰国後の90年に吉福敦子らとともにダンスカンパニーATA DANCEを結成。96年からパフォーマンスグループ「ダムタイプ」に参加し、『OR』『メモランダム』『ヴォヤージュ』に出演しました。

2000年以降は平行して精力的にソロ活動を行なっています。山川冬樹、伊東篤弘ら多くのアーティストをはじめ、藤本隆行、白井剛との『true/本当のこと』(07〜11)、『Node/砂漠の老人』(13)、香港のディック・ウォン、映画監督今泉浩一との『Tri_K』(10〜12)、ジョナサンM.ホールとの『TOUCH OF THE OTHER』(15〜16)など、コラボレーション作品も多数あります。

photo by Tatsuhiko Nakagawa

また、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭ディレクター(96〜99)、デレク・ジャーマン『クロマ』(03)翻訳、短編映画『KINGYO』(エドモンド楊監督、09年ヴェネツィア映画祭正式招待作品)出演、山城知佳子監督作品『創造の発端—アブダクション/子供』(2015)、来る8月に公開予定の同新作『リフレーミング』出演など、ジャンルを超えた活動を展開してきました。TRUアーティスティック・ディレクターも務めています。

川口が舞踏についてのパフォーマンス作品を発表したのは、舞踏家の田辺知美との『ザ・シック・ダンサー』(12〜)、次いで13年に初演以来継続するこの『大野一雄について』です。

photo by Tatsuhiko Nakagawa

『大野一雄について』について

土方巽とともに舞踏という新しい身体表現を生み出した大野一雄(1906〜2010)の公演ビデオから、川口隆夫がその動きを完全コピーし、ダンサーとしての大野一雄を再現します。

内面で起こっていることに目を向けたいとソロ活動を開始し、身体表現を探り試行錯誤していたある日、ふいに「大野一雄」という言葉が降りてきたと川口は言います。彼は大野の生前の舞台を見ていません。公演ビデオを典拠に、大野の踊りをコピーする一方でアーカイブ資料を研究し、関係者を訪ね、動きを記憶するために多数のドローイングを描くなどの作業を重ねました。

photo by Tatsuhiko Nakagawa

本作は、大野一雄が舞台を離れていた時期に撮影された自主映画『O氏の肖像』(長野千秋監督、1969)を、川口が再解釈したパフォーマンスで始まります。その後川口は衣装を着替えながら、土方巽が演出した3作品、『ラ・アルヘンチーナ頌』(1977)、『私のお母さん』(1981)、『死海』(1985)の初演舞台映像から選んだ踊りをコピーしていきます。映像作家・演出家でTRUキュレーターでもある飯名尚人がドラマトゥルクを手がけました。

photo by Tatsuhiko Nakagawa

川口は当時の舞台映像の音声にあわせて踊ります。それゆえ、音楽に混じって観客の咳払いや拍手、時には川口の動きと完全には一致しない足踏みの音も聞こえてきます(それは大野一雄の足音です)。大野の舞台を実際に見たことがある人、再演を観たことがある人、映像でしか大野を観たことがない人、大野を知らない人、それぞれが大野の踊りを想像して重ねていくうち、川口の身体に複数の時間が交差し、優しい幽霊のような、ここにいない大野一雄の存在を感じていくのです。

photo by Tatsuhiko Nakagawa

Credit

『大野一雄について」配信映像

構成演出・出演

川口隆夫

作品内映像

飯名尚人

映像出演

大野慶人

衣装

北村教子

ダンス解析・指導

平田友子

舞台監督

河内崇

照明

森規幸

音響

國府田典明

撮影・編集

NPO法人LAND FES

スチール

中川達彦

和田翼

協力

大野一雄舞踏研究所

スタジオ・サイプレス

田辺知美

立石裕美

呉宮百合香

オリジナル「大野一雄について」(2013年初演)

コンセプト・出演

川口隆夫

振付

大野一雄

土方巽

ドラマトゥルク・映像・サウンド

飯名尚人

照明

溝端俊夫

映像出演

大野慶人

衣装

北村教子

協力

大野一雄舞踏研究所

主催

東京都

公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

企画運営

NPO法人ダンスアーカイヴ構想

アーティスト

川口隆夫|Takao Kawaguchi

1996年よりパフォーマンスグループ「ダムタイプ」に参加。2000年よりソロ活動を開始し、演劇・ダンス・映像・美術をまたいでパフォーマンスの幅広い可能性を追求する。08年より私的パフォーマンスシリーズ『a perfect life』を展開し、13年に第5回恵比寿映像祭に参加。近年は舞踏に関するパフォーマンス作品『ザ・シック・ダンサー』(田辺知美と共に、12年)、『大野一雄について』(13年)を発表。後者はニューヨーク・ベッシー賞にノミネートされ、18年にはパリ市立劇場でも上演された。
http://www.kawaguchitakao.com/

トークゲスト

ヴィヴィアン佐藤|Vivienne Sato

美術家、文筆家、非建築家、ドラァグクイーン、プロモーター。ジャンルを横断して独自の見解で分析。作品制作発表だけではなく、「同時代性」をキーワードに映画や演劇、都市など独自の芸術論で広域に批評を展開。ほかにヘッドドレスのWSを全国で子供から大人対象に多数開催。ヘッドドレスや化粧をファッションやポップカルチャーとしてではなく、呪術的なものとして捉え、「変身」「変化」するものではなく、「露出」「還元」するもの、本来の自分に戻る行為として定義。また、青森県七戸町の町興しコンサルタントや尾道観光大使など、日本全国の市町村や自治体、民間団体と関わり、「地域興し」と「人興し」を同質なものとして捉え活動。サンミュージック提携タレント。大正大学客員教授。横浜ダンスコレクションコンペティション Ⅰの審査員を2014年度から就任。