飯名尚人+川口隆夫+川村美紀子+松岡大
『三』
『三』(約24分)
BUTOHスナック(約45分)
BUTOHスナック 世界編 - Russian Talk(約45分)
日本語字幕:奥村文音
舞踏の誕生に深く関わった3人の舞踏家——土方巽、大野一雄、大野慶人の代表作を現代のダンサーが完全コピーします。踊り手は川村美紀子、川口隆夫、松岡大。舞踏の精神を現代の手法で鋭く反応する、当代きっての3人です。川村が土方巽の『疱瘡譚』、川口が大野一雄の『ラ・アルヘンチーナ頌』、松岡が大野慶人の『土方三章』を厳密に再現します。アーカイブ映像の慎重な分析と真摯な稽古によって、舞踏をいま・ここに引き継ぐ試みです。3人のパフォーマンスを記録した映像のなかで、三面擬似ホログラムの映像インスタレーションも公開します。
参加アーティストについて
川村美紀子は学生時代に発表したデビュー作で一躍注目を集めて以来、国内外で発表を重ねるコンテンポラリー・ダンサーです。
川口隆夫は1996年に「ダムタイプ」に参加、2000年からソロ活動を始め、ジャンルをまたいでパフォーマンスの可能性を追求してきました。13年に発表した『大野一雄について』によってダンス界で高い評価を受けました。
松岡大は2005年から山海塾に参加し、現在も主要作品に出演中の舞踏家です。11年からは「LAND FES」を主宰するなど活動の幅を広げています。
舞踏という新しいダンスのスタイルを創出するきっかけになったのが、3人のダンサー——土方巽(1928-86)、大野一雄(1906-2010)、大野慶人(1938-2020)の出会いです。60年以上を経たいま、舞踏は「BUTOH」として国際的に知られ、世界の現代芸術に大きな影響を与えています。創出者3人の踊りを、現在活躍する3人のダンサーが完全コピーするのが本作の見どころのひとつです。
本作の構成・演出は飯名尚人が手がけました。飯名は映像・身体・言葉を使いジャンルを横断する作品を手がける映像作家、演出家、プロデューサーです。
作品中の天井画を手がけたのは、美術家の石原葉。オンラインエキシビションとして公開中の『舞踏出来事ロジー』(http://www.tokyorealunderground.net/program/dekigotology.html)をもとに、新作が加わっています。
『三』について
川口隆夫がコピーする『ラ・アルヘンチーナ頌』からの「タンゴ 鳥」(1977年)は土方が演出を手がけています。大野一雄の代表作であり、また舞踏を代表する作品でもあります。
松岡大がコピーする『土方三章』は、もともと1985年の舞踏フェスティバルで初演された『死海』のワンシーンで、土方が演出しました。しばらく舞踏から離れていた大野慶人のカムバック公演でもあります。以来、慶人はこの振付を大切に踊りつづけました。
本作の構成にあたって、飯名は土方巽、大野一雄、大野慶人の三角関係に着目しました。土方は1949年に《大野一雄現代舞踊第1回公演》を見て衝撃を受け、59年4月、大野一雄の『老人と海』の舞台監督を務め、5月には『禁色』を発表。これは大野一雄の次男である大野慶人とのデュエット作品で、舞踏の始まりの作品とされています。
このような経緯をもつ3人それぞれが他の2人に対して「尊敬と嫉妬」の思いを同時に抱き、互いに影響しあって舞踏という新しいダンスを作り出していったと飯名は考えます。本作ではそのスリリングな拮抗を描くことを目指し、川村美紀子に土方巽のソロ作品『疱瘡譚』(1972年)のコピーを依頼しました。
また、作品中に登場するホログラム映像は、正面、右、左の3方向からダンサーの踊りを撮影した映像からの合成によるものです。
ダンサーの踊りの重心や足の位置を3方向から記録する映像とそれを合成したホログラムは、立体的に踊りを記録し、再生することが可能です。今後、より詳細なダンスアーカイブ構築のために大きな役割を果たすことを目指して、実験が続けられています。
BUTOHスナック 世界編 - Russian Talk
日本を拠点にアートの分野で活動するロシア出身の3名のスピーカー、ユーリア・スコーゴレワ(写真家)、オリガ・ゲラシム(建築家・デザイナー)、Rodion TR(キュレーター)が、舞踏との関わりや『三』を見た感想についてディスカッションします。
生配信中はチャットをオープンしますので、ぜひご参加ください。ロシア語でのディスカッションですが、チャットの書き込みは日本語・英語も可です。
『三』というこの企画は、私たちを交差へと促す。それは網を編んでゆく。現代の三人の躍り手が、舞踏を創出した三巨匠の三つの出演作にそれぞれ取り組み、踊り、展示、映像、ホログラム、テレビジョンを駆使して、動きを通じて彼らを呼び出し再現する。Rodion TR(Gallery Neo Tokyo)、ユーリア・スコーゴレワ(舞踏・コンテンポラリーダンス写真家)、オリガ・ゲラシム(デザイナー・建築家)の3名が集い、マルチメディアの織物が編まれてゆく様を追いながら、ときおりきらっと光る結び目に目を留め、ロシア語圏の視聴者にそのひと筆を受け渡しつつ、先へと綴る。
配信中、チャットを通じて視聴者からの質問・意見を受け付けている。あなたもぜひ、編みこまれてみては?
Rodion TR(翻訳:奥村文音)
Проект «3» толкает нас в пересечения. Он плетёт сеть. 3 современных танцора обращаются к 3-м произведениям 3-х мастеров в основе Буто, чтобы вызвать и вос-произвести их в движении сквозь медиа: танец, выставка, видео, голограмма, телевидение. Rodion TR (Gallery-Neo.tokyo), Юлия Скогорева (фотограф Буто и современного танца) и Ольга Герасим (дизайнер и архитектор) встречаются, втроём, чтобы проследить это мульти-медиальное плетение, отметить яркие узлы и продолжить вязь, передав её русскоязычному зрителю.
Живой чат открыт во время трансляции. Вплетайтесь!
Rodion TR
アーティスト
飯名尚人|Naoto Iina
映像作家・演出家・ドラマトゥルク・映像セノグラファー・プロデューサー。Dance and Media Japan主宰、国際ダンス映画祭主宰。東京造形大学准教授、座・高円寺劇場創造アカデミー講師 。映像・身体・言葉を用いてジャンル横断的作品を手掛ける。オンライン舞踏番組「Re-Butoooh(リ・ブトー)」(NPO法人ダンスアーカイヴ構想)では、演出・構成・撮影・編集を担当している。
川口隆夫|Takao Kawaguchi
1996年よりパフォーマンスグループ「ダムタイプ」に参加。2000年よりソロ活動を開始し、演劇・ダンス・映像・美術をまたいでパフォーマンスの幅広い可能性を追求する。08年より私的パフォーマンスシリーズ『a perfect life』を展開し、13年に第5回恵比寿映像祭に参加。近年は舞踏に関するパフォーマンス作品『ザ・シック・ダンサー』(田辺知美と共に、12年)、『大野一雄について』(13年)を発表。後者はニューヨーク・ベッシー賞にノミネートされ、18年にはパリ市立劇場でも上演された。
http://www.kawaguchitakao.com/
©Etsuko Suzuki
川村美紀子|Mikiko Kawamura
1990年生まれ。16歳よりダンスを始め、2011年より本格的に作品を発表。新人賞を総なめにし、日本ダンス界の新鋭として話題を呼ぶ。国内外で発表を重ね、16年にはフランス国立ダンスセンターおよびCCN/Rを拠点に、パリ、リヨン、グルノーブル、マルセイユ、ル・アーブルにて半年間の滞在制作を行う。劇場にとどまらず、屋外やライブイベントでのパフォーマンス、映像・音楽制作、アクセサリー製作など、活動を多彩に展開。2019年より南房総へ移住。
Photo by 宮川舞子
松岡大|Dai Matsuoka
2005年より山海塾に舞踏手として参加。『金柑少年』『とばり』『卵熱』『ARC』などの主要作品に出演中。11年より、街を歩きながらミュージシャンとダンサーによるパフォーマンスを鑑賞する「LAND FES」を主催。18年より小田原市にて、障がいのある人ない人共にダンスを創る「スクランブル・ダンスプロジェクト」で講師を務める。様々な舞踏家によるオンラインレッスンプラットフォーム「BUTOH CHOREO LAB」主宰。
モデレーター
Photo by Katsuhiro Ichikawa
原田 環|Tamaki Harada
エディター/ライター/ベイカー。1998年に中山真理とアート&デザインのライターユニット、カワイイファクトリーを結成。雑誌や単行本、各種刊行物の執筆、企画編集を手がける。2009年出版レーベル「True Ring」を設立。独自の視点からのアートおよびデザイン書籍の企画・編集を実践している。最新刊は『satoshi hirose』(2020年)。東京・八丁堀で運営するカワイイブレッド&コーヒーのチーフベイカーも兼任。朝5時からアルチザンブレッドを焼いている。
https://linktr.ee/truering_cawaiifactory/
Russian Talk - ゲスト
ユーリア・スコーゴレワ|Юлия Скогорева
ロシア生まれのファインアート・ドキュメンタリー写真家のユーリア・スコーゴレワは、過去10年間、東京を拠点としている。
モスクワ国立大学で日本学を専攻したユーリアは、日本の舞踏ダンサーの通訳を務め、その舞台裏での生活がきっかけで、彼女はダンサーの写真を撮り始めた。その後ユーリアはダンスという角度から、現代日本社会が抱えている課題を問い、国際および日本の複数の写真賞を受賞。彼女の作品は世界中のさまざまな展示会や写真フェスティバルでも特集されている。
https://www.yuliasko.com https://www.instagram.com/yuliasko.ph
Фотограф, арт-директор.
Юлия изучала лингвистику японского языка в Институте Стран Азии Африки МГУ им. М.В.Ломоносова. Во время учебы Юлия работала переводчиком для японских танцоров, приезжающих на гастроли в Москву.
Закулисная жизнь театра и магия танца вдохновили Юлию на занятие фотографией. Окончив МГУ в 2010 году, она переехала в Токио, где поступила в Институт Искусства Фотографии и продолжила фотографировать танцоров.
Сейчас Юлия живет и работает фотографом в Токио, регулярно участвуя в выставках и арт-проектах.
https://www.yuliasko.com https://www.instagram.com/yuliasko.ph
オリガ・ゲラシム|Ольга Герасим
サンクトペテルブルグ出身の建築家兼デザイナーであるオリガ・ゲラシムは、複数の国際プロジェクトに参加し、空間デザイン、工業デザイン、インテリアデザインの各分野で高い評価を得ている。これまで手掛けたプロジェクトには、リゾートホテルやチームのデザイン、LeMans Championshipのトロフィーデザインなど。6年前に来日し、水墨画、木版画、刺し子などの日本の伝統芸術を探求する旅に出、それらをグラフィックデザインや空間デザインの手法で拡張。2018年に国立新美術館にて展示された水墨画作品が西日本新聞社賞を受賞するなど、革新的なアプローチで数々のクリエイティブな成果をあげている。
https://olgaguera.com/ https://www.instagram.com/olgaguera/
Архитектор и дизайнер из Санкт-Петербурга, Ольга Герасим последние шесть лет живет и работает в Токио, исследуя традиционное японское искусство и ремесло, и инкорпорируя их в свою практику. В творчестве Ольги, будь то разработка концепции отеля, дизайн для гоночной команды, участвующей в 24 часах Ле Мана или мультидисциплинарные выставочные проекты, разнообразные виды японского искусства, такие как мокуханга и суибокуга, находят отражение в современном дизайне. Работы Ольги были включены в 2018 году в групповую выставку в National Art Center в Токио, а также отмечены призом Nishi-Nihon Shinbun.
https://olgaguera.com/ https://www.instagram.com/olgaguera/
Rodion TR
ロシアのサンクトペテルブルクで精神分析を修めたのち、研究者として2003年に来日。武蔵野美術大学大学院在学中にENTOMORODIA curatorial net/workを立ち上げ、国際的なアートプロジェクトに積極的に関わってきた。2015年に博士号を取得し、その後、自由と自力をモットーに研究を続けていくことを決意。現在は自身のギャラリーGallery-Neo.tokyoを運営しており、現実の中へその外部にあるものを引き込もうとする果敢なるアーティストの発掘・紹介に10年にわたって携わっている。
www.gallery-neo.tokyo
После изучения психоанализа в Санкт-Петербурге, Россия, Rodion TR прибыл в Японию в качестве исследователя в 2003 году. Будучи в аспирантуре Университета Искусств Мусасино, он основал ENTOMORODIA curatorial net/work и активно участвовал в международных проектах. После получения докторской степени в 2015-м году он решил продолжить своё исследование искусства, основываясь на принципах независимости и самообеспеченности. В настоящий момент, он руководит его Gallery-Neo.tokyo, что на протяжении 10-ти лет находит и показывает художников, которые осмеливаются ввести в реальность то, что вне.
www.gallery-neo.tokyo
Credit
演出・構成
飯名尚人
展示デザイン・設営
株式会社鈴木事務所
撮影編集
NPO法人LAND FES
出演協力
久世龍五郎
「タンゴ 鳥(「大野一雄について」より)」
振付演出
土方 巽
大野一雄
出演
川口隆夫
ドラマトゥルク
飯名尚人
照明・マネージメント
溝端俊夫
衣装
北村教子
協力
大野一雄舞踏研究所
「疱瘡譚」
振付
土方 巽
出演
川村美紀子
衣装
北村教子
協力
慶應義塾大学アート・センター
「土方三章」
振付
土方 巽
監修
大野慶人
出演
松岡 大
協力
大野一雄舞踏研究所
舞台技術スタッフ
河内 崇(舞台監督)
呂師(砂組)(舞台監督)
森 規幸(balance,inc.DESIGN)(照明デザイン)
國府田典明(音響)
展示スタッフ
飯名尚人(展示構成・撮影・編集)
吉田尚弘(撮影・編集)
河村衣里(撮影・編集)
石原 葉(舞踏天井画)
株式会社鈴木事務所(展示設営 デザイン)
公益財団法人セゾン文化財団 森下スタジオ(撮影会場)
スチール撮影
中川達彦
和田翼
協力
大野一雄舞踏研究所
慶應義塾大学アート・センター
公益財団法人セゾン文化財団
Dance and Media Japan
主催
東京都
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
企画運営
NPO法人ダンスアーカイヴ構想
自宅で舞踏ホログラム
三面擬似ホログラムは、ダンスを立体でアーカイブする試みのひとつです。
その動きはどのくらいの歩幅で、立ち上がるときの重心はどこにあって・・・
正面だけなく左右からの映像情報も交えてダンスを見てみると新たな発見があります。
実際のダンサーの映像をそのまま使うことで、表情、筋肉、そして衣装の動きが記録され、
さらに目に見えない余韻も記録されます。
舞踏の動きをアーカイヴする時、動きの数値化ではなく、その踊り手だけが持つムードをアーカイヴできることは大切です。
ダンスの本質は、そのダンサーから発せられる目には見えない何かだからです。
「三」で演じられた3人の踊りを、自宅で簡易的にホログラム化して鑑賞できます。
部屋を暗くして、スマホをスピーカーに接続して再生してください。
手のひらサイズの舞踏家が現れます。舞踏を研究するもよし、インテリアにするもよし、
幻想的な3人の舞踏の楽しみ方を探してみてください。
楽しみ方
ホログラムを再生する
Credit
演出・構成
飯名尚人
撮影・編集
吉田尚弘、河村衣里、飯名尚人
プロモーション映像制作
NPO法人LAND FES
「タンゴ 鳥(「大野一雄について」より)」
振付演出
土方 巽、
大野一雄
出演
川口隆夫
ドラマトゥルク
飯名尚人
照明・マネージメント
溝端俊夫
衣装
北村教子
協力
大野一雄舞踏研究所
「疱瘡譚」
振付
土方 巽
出演
川村美紀子
衣装
北村教子
協力
慶應義塾大学アート・センター
「土方三章」
振付
土方 巽
監修
大野慶人
出演
松岡 大
協力
大野一雄舞踏研究所
舞台技術スタッフ
呂師(砂組)(舞台監督)
森 規幸(balance,inc.DESIGN)(照明デザイン)
國府田典明(音響)
公益財団法人セゾン文化財団 森下スタジオ(撮影会場)
協力
大野一雄舞踏研究所
慶應義塾大学アート・センター
公益財団法人セゾン文化財団
Dance and Media Japan